初老の詩

初老の生活をつづります

都会の騒めきは私の脳ののどこかを刺激し

アドレナリンを大量に放出させる

都心に引っ越して不眠が酷くなったのはその所為だろう

随分と生活リズムが不規則になったものだ

無職だから成り立っているような生活リズム

 

騒めきに翻弄されながら

心地良い音を記憶の中から探る

そしていつも郷愁を覚える音にたどり着く

記憶を探りながら脳内再生する

時には涙があふれる

 

その音は

実家で過ごした生活リズムに伴う

海の近くで育った私は小鳥のさえずりではなく

ポンポン船の行きかう音で目を覚ます

窓から海に視線を移すと小さな漁船がポンポンと行き来している

時にはそれが何重にもなり海に広がる

昼間は同級生や地域の同年代とやくざのような方言で会話し

夕方、母親たちの子供たちを呼ぶ声で静寂の中へ向かう

20時を過ぎると海沿いの小さな集落は静寂に包まれ

波の音がリズムを刻みながら子守唄に代わる

時折聞こえる汽笛の音に遠くの街に思いはせながら眠りに落ちる

そしてまたポンポン船の音で目を覚ます

この繰り返し

中学生になるまで音楽のないこんな生活を送っていた

 

ここ数年その音をまた聞きたいと

実家に帰ると耳を澄ますがその音は聞こえない

焼玉エンジンからディーゼルエンジンに代わったためポンポンという音は消えてしまった

波の音もなぜか聞こえない

成長して聞き取れる周波数が狭まったのだろうか

汽笛も聞こえない

住民に配慮して緊急時以外汽笛を鳴らさなくなったのだろう

 

実家の窓から眺めると懐かしい音は聞こえない静寂さだけが増した

景色が広がる

この地域もかなりの過疎化が進んでいるのだろう

 

1年後にはそんな故郷に戻り

最後の親孝行をしようと思っている